焼き付いている景色②(たきで)

今日は、先日書いた「焼き付いている景色(たきで) - 日々の徒然」について、具体的な思い出を書こうと思う。今後あと3回くらい続くかもしれない。

「蛍祭りの帰り道」

僕の地元の近くの村では毎年6月になると廃校舎やそのグラウンド、駐車場、隣の神社を利用して蛍祭りが開催される。
会場の脇には道路を挟んで山沿いに小川が流れており、その川の一帯に蛍が舞う。蛍祭りはその名の通り、地元民が集まりそれを楽しむという趣旨の祭りだった。

中学校になって移動範囲が広がった僕は、中学校で新しく出来た友達と共に蛍祭りに行くことになったのだった。
夕方、未知の行事にわくわくしながら友達の家に行き、祭りの頃合になるまで遊んだ。
小学校まで同じ友達しか知らなかった僕は、新しい友達と遊ぶのが新鮮でとても楽しく、嬉しかった。これからもずっと皆で遊んでいけるのだと思うと心が踊った。
祭りの時間になると不運なことに雨が降り始めた。初夏特有の夕方から降る雨だ。生ぬるくアスファルトと土臭い湿気が僕らの肌にまとわりついた。
残念ながらその日は蛍を見れないかもしれないけれど、僕達は雨合羽を着て、自転車で祭り会場に向かった。

祭りの場所につくと、雨天のため校舎の中が会場になっていた。
残念ながら小川沿いに自転車を漕いで、祭りに向かう途中、蛍の姿は見られなかった。

中に入ると、中学校で新しく知り合った友達、先輩、まだ知らない子など色々な人がいた。その建物をうろちょろしたりみんなではしゃいでたりしたら、あっという間に楽しい時間は過ぎて行った。

新しい友達と仲良くなり、まるで冒険みたいに遠くまで皆で自転車を漕いで行ったその日は、自分の世界が広がって新たに始まったような、そんなわくわくするような希望をはっきりと感じていた。

そうして、(蛍を見れなかったのは残念だったけど、今日も楽しかったし、これからの毎日も楽しみだな。)と思いながら、僕は仲間と帰路についた。

建物を出ると、雨が降りやみ、川沿いの道には霧がたちこめていた。
雨がやんだ坂道を皆で自転車でくだるすがすがしさの中で、

霧の中に光がいくつも見えた。

たくさんの蛍が飛んでいて

その光が霧の中で反射してきらきらと

儚げに美しく輝いていた。

そのそれまで見たことのない幻想的な風景に思わず息を呑んだ。


小川沿いに坂を下り、仲間と別れた後も、
この仲間達とこの先も、
ずっとずっと自転車を漕いで、
知らない場所へと冒険して、
こうやって新しいことをどんどん見つけていけるものだと、そう思っていた。

これが今もずっと僕の心に焼き付いている景色の一つだ。