焼き付いている景色①(たきで)

「思い出の中で特に心に焼き付いている景色は何か」と聞かれた時に
読んでいる人はどんな景色が思い当たるだろうか。

当然ながら、今まで旅行で行った様々な観光スポットの絶景については、
やはり綺麗だったし、誰と見ただとか、どんな旅行だっただとか印象は残っている。

しかし僕は、過去を振り返るとそういう絶景とは違う、別の景色のことがまず先に思い浮かぶ。


僕の故郷はどうしようもないくらいの田舎だった。よく「この店があったらそこは田舎だ。」と揶揄する人をネット上で見かけるが僕の地元はそもそもそんな店すらなく、周辺には山と川しかなかった。そのため移動するにしても自転車で車で山沿い・堤防沿いにしばらく移動しないと市街地に出られないような場所だった。当然ながらどんどん住んでいる人の数は減る一方だ。

僕の心には、その頃のいくつかの景色とその時の思い出がずっと焼き付いている。

1つ目は「蛍祭りの帰り道」
2つ目は「知らない村の坂道を登った向こうの景色」
3つ目は「屋上で見た星空」

他にも、「暗闇の冬の山」だとか「山奥の渓流」だとか、挙げ出したら次々と出てくる。これらは全部当時の仲間と見たものだ。
それぞれの詳細については長くなってしまうのでまた後日書こうかと思う。

書いてみて改めて実感したが、
これらの風景からしても、山と川しかないどうしようもない田舎だったということが分かる。
だけど、あれほどまでに
頻繁に心が高鳴る景色に出会っていたのはあの中学生時代だけだろう。
あの頃までは確実に、毎日が新しい何かとの出会いで、毎日が常に変化していたと思える。明日が来るのが楽しみで仕方なかった。今日を振り返るのが楽しかった。
(今日も疲れたな)だとか
(もう明日が来てしまう)なんて
考えてしまっている今の自分が同じ状況であの景色を見ても、残念なことに
(何の変哲もないよくある風景だ)と感じてしまったり、
(それよりも早く帰って生産性のある何かをしなければ)と感じてしまったりするのだろう。

だからこそ、あの時にあの景色を見れて良かったと心から思える。

書いていたら他の人にもこの質問をしてみたくなった。きっとあるのだろう。心に焼き付いている思い出深い景色が。

僕は今日も研究室にいるが、
研究室の白い壁を見ていたら
ふとそんな遠い昔の景色を思い出した。